楽園のような私的隠れ宿~ロッジ・イン・ザ・ウッズ |バリ島カバカバ村

シンプルで自然と一体化しているのに未来的。ゲストが集うメインダイニング&ロビー/内観

オーナーの趣味嗜好が色濃い洒落たサスティナブルな個人的ホテル

バリ島チャングーから北へ1時間半。延々田んぼの広がるガバガバ村。
エントランスからメインダイニングの長テーブル、プールを囲うようにコの字型にグレーの漆喰のシンプルなヴィラはとにかくどこを撮っても絵になる美しさ。聞けば,オーナーはアジアで長くファッションの世界にいた方とのことで、宿泊に来るゲストもファッション関係の人が少なくないそうです。

起伏に富んだ敷地に宿泊者がいつでも自由に利用できるヨガシャラもあり、オーナーの住む建物も敷地内に建っており、食事の際にはゲスト全員が長テーブルに一堂に会し、オーナー夫婦も度々顔を出す、というゲスト同士の交流の場が自然とできるようなシステムになっています。

ホテル敷地の道一本挟んだ向かいには、ホテルの牧場と農園があります。トライアスロンにも挑戦するストイックなオーナーの好みか、ホテル内の食事はこの農園で採れたオーガニック野菜中心のメニューとなります。
牧場と農園と小規模でミニマルなつくりのホテル、そしてたくさんの動物たち。すべてがコントロールできるほどほどのサイズ感で自然の中で持続できそうな、ある意味ホテルの未来形の一つのカタチという印象を受けました。

ヤギやアヒル、馬たちの横では村この共たちがサッカーをしたりしているホテルの牧場
遠くにキンタマーニ高原で有名なバトゥール山を望むのどかな風景

シンプルで無駄のない室内

全6室のヴィラには、ホテルオーナーの飼う馬達の名前が付けられており、部屋のあちこちにその馬の写真がインテリアとして飾られています。
ツインは2室のみ、他はキングサイズベッド1台の部屋。
無駄なものが一切ない室内には、TVもありません。床から高い天井までの大きなガラス窓が美しい借景のようになっていて明るく広く感じ、ベッドで横になって庭をウロチョロする鳥たちや動物たちの様子を眺めているだけで楽しく童心に帰るような気がします。
部屋にはボトルの水とお湯と手作りの芋チップス、バスルームのアメニティも用意されています。

大きな窓で、ベッドからも外がフラットに見えるので、時折外に寝ているような感覚になる作り
広いバスルーム。鏡の中に電気のスイッチがあったり最新の機器はバリらしからぬ印象

白い動物達がホテルスタッフの役割を担う?

ホテルのサイトをご覧いただくとわかるのですが、このホテルは動物だらけ。しかも主役が全て白い動物たちなのです。
白い馬(各ヴィラの名前は馬達の名前になっています)、ヤギ、白い犬,白い鳩、アヒル、ニワトリ,そして池の鯉達までも白。朝はニワトリの鳴き声で目覚め,カーテンを開けると白い鳩やひよこ達がプールの水を啄んでいたりする,何とものどかな光景。
そして、ゲストの朝食の直前には、馬やヤギ達が日替わりでゲストのテーブルの横で一緒に朝食を食べるというアトラクションもあります。真っ白な馬やヤギに干し草を食べさせたりするのは動物好きにはたまらない体験です。ホテルのサイトをご覧いただくとわかるのですが、このホテルは動物だらけ。しかも全て白い動物たちなのです。ちなみに馬達の散歩に付き合ってホテルスタッフと歩くことも可能です。
言ってみれば彼ら動物たちがゲストの気持ちを和ませてくれるホテルスタッフのような役割をしているといえるかもしれません。

比較的小柄な種類の馬たちはほぼ毎日シャワーを浴び散歩をしている
白い動物たちへの敬意をこめてなのか、ゲストの多くが白いドレスやシャツ姿だったのが印象的

新しい食事スタイル

このホテルのもうひとつ特徴として、食事のスタイルがあげられるでしょう。
「宿泊ゲストが全員集合して、長テーブルで一緒に食事をするスタイル」。つまり、世界各地から集まってきた人達と毎回一緒のテーブルで向かい合って食事をとることになります。この点は好き嫌いが分かれる大きなポイント。
わたしが宿泊したときは、メキシコから来たモデルのカップル、サウジアラビアのファミリー、オーストラリアの妊婦のインフルエンサーの女子2人。しかしながら昨今Netflixなどの影響で日本のアニメの知名度は世界的で、ほぼ万国共通で多少なりとも皆日本について何かしらの思いがあるようで、話題には事欠きませんでした。
加えて、食材が自家農園製ということもあり、収穫の内容や量が日々変わるため、毎日前日にホテルのサイトからメニューを確認して事前オーダーをしておかねばならない手間があります。
また、宿泊して初めて気がついたのは,ゲストが朝食の際は皆白い服装でテーブルについていること。時折顔をだすオーナーだけが黒い格好をしていました。
これはホテルサイトのどこかに書いてあったのか、皆さん白中心の美しい恰好をして食事に参加していらっしゃいました。

メニューの一例/ひよこ豆のピラフ風。
ちょうど収穫の時期だと、オーナーがゲスト全員にふるまってくれたパッションフルーツのデザート

ガバガバ村は英語など全く通じないのどかな村。近くにレストランなどもありません。本当に人々が暮らす小さな農村です。昼間はホテル内でゆっくりするのもよいし、GRAB(uberのようなもの)を読んでチャングーなどの街に出かけるのもよし。だからこそ素朴で不便なバリ島らしい時間を味わえるといえます。目覚ましい開発が進むバリ島で、久しぶりに見つけた個性的なホテル。好みはわかれますが、旅好き,動物好きで、様々な人達との偶然の出会いに興味のある方にはお勧めのホテルといえるでしょう。

日中は静かなホテル内風景
食事前に少し騒然とする動物たちの朝食風景/メインダイニング

撮影・文:はぎわらゆうた(Yuta Hagiwara)

投稿者

  • (はぎわら・ゆうた) 1965年生まれ、東京都出身。 20代より旅行会社に勤務。旅行企画・広報などを担当。PINKは2008年の開業時より携わり、単なる旅行代理店ではなく、お客様の渡航経験や趣味、嗜好に合わせてより深くカスタマイズした唯一無二のプラン作りを心掛けるようになる。 個人的には、現在4匹の犬を飼い、大の動物好き。調理師や介護ヘルパーの資格を持ち、「人生は思い出作り」と旅行業界だけでなく様々な職種や世代とのかかわりを愉しんでいる。好きな国はスリランカ、インド、ブータン、バリ島、フランス。ホテルは、価格に関わらず、人の息遣いを感じるぬくもりのあるホテルが好き。

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