PINK への旅のオーダーNo1 はスリランカ旅。この連載では、これからスリランカへとお出かけの方に向けて、その魅力の一端をご紹介させていただきます。3 回目は前回に引き続き「熱帯建築家」、ジェフリー・バワの軌跡と関連施設をご紹介します。
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夢見がちな青年が世界に名を馳せるまで
名家に生まれ、道楽ともいえる人生を過ごしていた青年、ジェフリー・バワ(以降、バワ)がたどり着いた建築家という職業。しかし、その間に磨かれた才能や見聞、仕事を引き寄せる人脈は、その後の人生の翼となりました。それまで実務経験ゼロ、38 歳という遅いスタートではありましたが彼の軌跡は、私たちに運命を変えるのは何歳でも可能だと教えてくれます。
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イギリスでアーキュテクトの技術と素養を身につけた帰国後、バワは地元の建築家ジミー・ニーラギリアの事務所でジュニア・パートナーの座を得ます。やがて頭角を現し、1967 年に事務所の主任となりました。当時、建築家の有資格者はコロンボでは20 人に満たずの発展途上段階でした。そこに水星の如く現れたバワでしたが、一部では、家柄や留学経験、イギリス仕込みの派手さが嫌われる要因にもなっていたようです。
とはいえ、建築家になってからバワの活躍を上げると枚挙に暇がありません。最初に土地を取得し、のちにバワの理想郷といわれた『ルヌガンガ』、旧事務所跡の『パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ 』。旧ブルーラグーンホテルの現『ジェットウイング・ラグーン』や『ベントタ・ビーチ・ホテル』。また、1970 年のことになりますが大阪万博スリランカ館も彼の設計によるものでした。ほかに邸宅や公共施設ほか、様々な作品をスリランカに残しています。
バワの「熱帯建築」とは?
「熱帯建築家」と形容されたバワですが、どんな作風なのでしょうか。特徴としてヨーロッパの中庭付きの住宅からの影響。さらに父のベンジャミン・ウィリアム・バワがムスリム(イスラム教徒)であったことからでしょうか。ムスリムの伝統的な長屋スタイルも反映されています。
それらは、屋内に居ながらにして自然を感じられるシームレスな空間と内外を繋ぐ植物。美的なだけでなく強い日差しや雨といったスリランカの天候も考慮されています。屋根にも重きを置き、沢山の素材や工法を取り入れた建物を多く残しています。
ほかに中庭には、ロジア(壁材で箱型に囲んだ屋根付きの庭園スタイル)やプール。バルコニーや屋上テラスがあり、最初は珍しがられたのですが1960 年代後半には、そうしたバワスタイルが浸透していきました。
また、収集癖があったバワ。各国を旅して集めた家具や雑貨、仏像やアートいった装飾はいずれも「らしさ」を引き立てています。独創性を持つアーティストとの出逢いも世界観を深めていきました。スリランカの伝統工芸のひとつ、ろうけつ染めの作家、エナ・デ・シルバ。惜しくも2021 年5 月30 日に死去したラキ・セナナヤケは、バワの作品になくてはならないアーティストでした。
「バワ」を旅する幸福
さて、PINK は、かねてよりバワ作品であるホテルのブッキングや関連施設観光のお手配を得意としています。コロンボ市内であれば、シーマ・マラカヤ寺院やスリランカ国会議事堂は、ファンでなくても一見の価値ある歴史的建造物です。また、バワの事務所兼自宅であった『No.11』の見学や旧事務所跡の『パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ 』も人気スポットです。
<No.11(ナンバー イレブン)>
イギリスの建築留学の帰国から2 年後(1959 年)にコロンボで借りたバンガローは、バガタレ 33 番通りの行き止まりに4 軒並んだうちの3番目の家でした。最初は仮住まいとして改装。入居直後から大家さんに他の住宅が空室になったら、すべてのバンガローをすべて売って欲しいと頼み込んでいたといいます。
後日、4 番目のバンガローに住んでいたマルクス主義のランカ・サマ・サマジャ党のリーダーを務めたジャーナリスト、スマティ・バンダを追い出すことに成功。3 番目と4 番目を繋ぎダイニングルームと展示スペース、車庫を作りました。1968 年には残りの2 棟も手に入れ、現在の造りにしています。
この家は住まい兼事務所でありつつコロンボの実験室となりました。33 通り11 番地にあることから『No.11』と呼ばれ、のちの作品に反映される試みが残されていてバワファンならば必見です。これからバワ設計のホテルに泊まりたいと考えている方には、まず訪れて欲しい場所でもあります。
バワの遺産のひとつである『No.11』には、現在、ジェフリー・バワ財団(Geoffrey Bawa Trust)によって完全予約制で14:00 から行われる約45 分の見学ツアー「Number 11 House Tours」が用意されています。バワの自室やリビング、ガーデン部分は撮影禁止のエリアとなりますが見学は可能。彼が旅した国々でインスパイアされた建築スタイルや収集したアートやインテリアを眺めることができます。PINKのスリランカツアーをお申込みいただいた方ならばご予約のお手配も可能です。
また、1 組のみ宿泊を受け付けています。かつてバワが住み、思考と実験を繰り返した空間に泊まることができ、ジェフリー・バワが生きた時代に浸ることができます。宿泊者がいない場合は、見学ツアーでも見られます。
No.11
住所:No. 11, 33rd Lane, Bagatelle Road Colombo Sri Lanka
見学時間:(平日)10:00/14:00/15:30(土曜日)11:00/16:00(日
曜日)11:00
詳細:ガイド付きツアー(英語)、約45 分、完全予約制で先着順にて受付
入場料:LKR 5000(外国人料金)
備考:日によって見学の有無があるため、あらかじめお問い合わせください
また、バワの旧事務所跡である『パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ(Paradise Road The Gallery Cafe)』はローカルからも愛される場所です。
<パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ>
この旧事務所跡は、1998 年にオーナーでありデザイナーでもあるシャンタ・フェルナンドによって改装され『パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ』に生まれ変わり現在も気軽に訪れることができます。
オフィスとして使っていた当時のバワの家具は一点のみですが、外枠は大きく変わっていません。バワエントランスからリビングへと繋がる中庭にプール、ロッジア。バワが好んだ白と黒の色調。改装時、アート愛好家のフェルナンドによるデザインコンセプトを気に入っていたバワですが、アートもそのひとつ。回廊はアートスペースになっていて新進気鋭のアーティストに貸し出されており、毎月作品が変わる度に、今は亡きバワとのコラボレーションと、スリランカアート界の新しい風を感じることができます。
フォトジェニックな空間ですが、単なるオシャレカフェではなく飲食の部分でも定評があります。午前10:00 から00:00 まで営業。軽めの朝ごはんからランチ、ティータイム、ディナータイム、カクテルタイムと終日ご利用いただけます。特筆すべきはお食事で地元料理と各国の人気料理を提供。また、「The World’s 50 Best Restaurants 2024」で「コロンボの最高のレストランとバーの8つ」に選ばれています。まだミシュランがまだ展開していないスリランカでは、この評価は最高ランクとなります。
約30 種類もあるスイーツに注目。手作りケーキやサンデー、モクテルなど地元の方々もお茶や打合せを兼ねて利用しているのですが、とくに人気はノンアルコールの「ヴァージン・フローズン・ストロベリー・マルガリータ」。
アルコール類はカクテルやワイン、ウィスキーにビールほか、豊富に揃っています。スリランカは法律上、食堂などではアルコールを提供していないため、お食事とお酒を楽しみたい方は、許可を得たバーやレストランに行く必要があります。そういう意味でも覚えておきたいスポットです。
そして、スリランカ人は甘いものが大好き。伝統的なお菓子から洋風のケーキやタルトまで、多くのお店に並んでいます。旅先では、ホテル直行でないとテイクアウトは難しいので、お茶と共に楽しんでみてはいかがでしょうか。
スリランカらしさを味わうならば、甘く懐かしく感じるパームシュガー。さらにココナツの木の花蜜から採った黒蜜のようなキトゥルを使ったお菓子がお薦め。そこで選んだのは、「ジャガリーサンデー」。自家製パームシュガーアイスクリームの自家製パームシュガーフロスを飾ったスイーツです。
エントランス脇には系列店『パラダイスロード(PARADISE ROAD)』のショップを構え、民芸品やアンティーク、雑貨などを販売しています。カフェで使用されている食器やカトラリーも売られているので気に入った方はお土産にどうぞ。
席数も多くゆったりした空間なのでグループでのご利用も可能。二階にはウェディングや会食使われるプライベート ダイニング ルーム「The Upstairs Gallery」があり、36 名(着席)~45 名(立食)まで収容できます。
パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ
<Paradise Road The Gallery Cafe>
住所:2 Alfred House Rd, Colombo 03, Colombo, Western Province,
Colombo
電話:+94 112 582 162
営業時間:10:00~00:00
定休日:無休(ただし貸切りやメンテナンスなどにより定休日の場合あり)
備考:予約がお薦め
以上、連載【PINK で行く 「輝きの島」スリランカの歩き方】2、3ではジェフリー・バワのプロフィールと関連施設をご紹介しました。ご旅行の際にお役立ていただければ幸いです。
撮影・文:泉美 咲月(Satsuki Izumi)
参考文献:「ジェフリー・バワの全仕事」(著者 ディヴィッド・ロブソン/日本語翻訳高橋正明/グラフィック社刊)、「IN SEARCH OF BAWA Master Architect of Sri Lanka」(著者ディヴィッド・ロブソン/TALISMAN 刊)、および現地取材
これまでの連載【PINKで行く 「輝きの島」スリランカの歩き方】
独創的な熱帯建築家ジェフリー・バワの世界とスリランカのホテル
URL:https://www.loveandtravel.co.jp/bawa/
問い合わせ先:03-6264-0740
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