ようこそ、デ・サラム家へ 泊れる邸宅【デ サラム ハウス】~PINKで行く ジェフリー・バワの世界~


ホテル好きならば素通りできるはずがないのが実は、スリランカです。とくに世界を代表する近代建築家、ジェフリー・バワがデザインしたホテルめぐりはPINKでアーユルベーダと人気を二分する旅。まずは、公開及びホテル運営してまだ6年目の泊まれる邸宅『デ サラム ハウス』をご紹介させていただきます。

ジェフリー・バワの邸宅作品に泊まる

『デ サラム ハウス』は、たった4室の小さなホテル。改装を経て2019年に公開。以降、ジェフリー・バワ財団(Geoffrey Bawa Trust)によってホテルとして運営されています。スリランカ国会議事堂、シーマ・マラカヤ寺院、そしてホテルとバワが残した遺産は数々あるものの邸宅となると話しは別。1970年代初頭、政府の規制により民間の住宅建設の許可が下りなくなったことからスリランカで彼が手掛けた邸宅作品は、このデ・サラム家のみなのです。

1970年、植民地時代からの名家の出身であるロバート・デ・サラムが友人であったジェフリー・バワ(以降、バワと表記)に設計を依頼。4人の子どもたちのための住まいをデザインしました。その際、バワが提案したのは、各戸がエナ・デ・シルバ・ハウス(1960年代後半からラキ・セナナヤケとエナ・デ・シルバが立ち上げた工房)のミニバージョンという構想。オランダ系ムスリムの伝統的な中庭のある伝統的な長屋がイメージされていました。


後日、そのロバートと母、ミリアム・ピエリス・デラニヤガラの三男に生まれスリランカを代表するピアニストであるドゥルヴィ・デ・サラムが、この邸宅の一角を継承。1986年にドゥルヴィはバワへと改装を依頼し、現在の『デ サラム ハウス』の原型が誕生します。

長い路地の扉の奥には隠れ家のような『デ サラム ハウス』が佇む

実は当初、バワがドゥルヴィの依頼を断ったというエピソードが残っています。当時、バワはスリランカ国会議事堂とルフヌ大学を同時に手掛けるという大プロジェクトを手掛けており、心に余裕をなくし疲労困憊していたとか。しかし、ドゥルヴィの案内で出向いた細い小径の奥にある、静かで隠れ家のような空間をひと目見て気が変わります。直感的であり空間感覚が優れていたとされる彼ならでは。その地に己が作り出す未来を見たのでしょう。こうして新デ・サラム邸に着手します。


その後、ドゥルヴィと妻のシャルミニがイギリスに移住したのち、他者へと貸し出されていた時代もありましたが、バワの生誕100年となる2019年(1919年7月23日生まれ~2003年5月27日没)、彼の事務所に勤務していた女性建築家、アミラ・デ・メルによって修復・改装され初公開されました

路地の漆喰の壁は経年変化しつつも味わいある雰囲気を作り出している。また、ホテルへの扉を開けるとまずは
ブーゲンビリアに彩られた庭が迎えてくれる

場所は、お買い物やお食事、観光にも便利なコロンボのワード・プレイス。しかし、路地の奥、ベンガルヤハズカズラの咲く小径の先にあるため、喧騒を忘れるほど静か。

この小径は、さながらバワの世界へと導く序曲。扉を開けると熱帯建築家と称されたバワならでは趣きに迎えられます。

ダイニングルームの中にもシームレスなスペースがある


バワ建築は、室内から屋外へとシームレスに繋がるのが特徴。どこにいても雨の雫や風、陽の光を感じられ、まるで自然の中で過ごしているかのよう。天気や時刻で変化するスクリーンのようにも見え、ゲスト毎に違ったドラマティックな想い出を授けてくれます。究極のシティリゾートともいえるでしょう。

このドゥルヴィ夫妻のためにデザインされた新デ・サラム邸は、中庭で区切られた5つのパビリオンから構成され最初の依頼人である両親の所有する元の家の一部も使われています。

(左)クラッシック界で活躍するドゥルヴィ・デ・サラムと兄のロハン・デ・サラムのポスターが壁に飾られ
ている(右)ミュージックルーム。アートを収集していたデ・サラム家の所有の貴重な芸術作品が飾られている。


そして、音楽一家の邸宅の象徴はミュージックルーム兼ライブラリー。ぜひ、ここで目を閉じ、住人たちが奏でたピアノやバイオリンの音、ゲストの談笑などを想像してみてください。たちまちタイムスリップし、当時の社交界に仲間入りした気分になります。

ホテルとしてのデ サラム ハウス

スリランカの民族衣装であるサロンを巻いたスタッフがゲストを迎えてくれる(右)ゲストによるサイン帖。世
界各国のバワファンが宿泊した足跡でもある。


『デ サラム ハウス』は、B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)スタイル。ダイニングルームでチェックインをしたら通されるゲストルームは4つ。ドゥルヴィ夫妻の長女マンディラ(バイオリニスト)、次女のラディカ(クラシックのバイオリニスト及びジャズのベーシスト)、ドゥルヴィとシャルミニ夫婦の寝室。そして、ドゥルヴィ夫妻がイギリスからスリランカへと一時帰国する際に使っていた建物の寝室に宿泊することができます。

バワらしい中庭に面した屋外のリビングルーム。両親の時代からあった樹木も残されている


例えば、リビングから二階に上がると次女・ランディラの部屋(スタンダード ルーム)。ベッドルームとシャワールーム。こじんまりとした間取りですが、ランディラの暮らしを再現するような気持ちになれ、ずっと住みたい気分にさせてくれ、ひとり旅にもぴったり。



そして、おひとり様はもちろん、ご家族連れやお友達同士での宿泊にも役立つ一棟建てのバワスイート。広々としていて3人まで宿泊可能です。昔ながらの箪笥式のクローゼットや天井のシーリングファンがノスタルジック。特筆すべきは部屋の外に設けられた専用のミニキッチンがついたホワイエとシャワールーム。この客室専用なのでリラックスした時間をお過ごしいただけます。


仏教国・スリランカでは朝早くからお経を唱える習慣があり、ここでもまた近くの小学校から聴こえてくる祈りの声で目覚めることができます。安らかな眠りから覚めたら朝ごはん。一階のダイニングルームでいただきます。

ダイニングルームから見える中庭にはプルメリアやブーゲンビリア、ジャスミンが風に揺れる


朝食のメニューは、フルーツにコーヒー、パンと卵料理とシンプルですが、この家そのものがご馳走。ここでしか見ることのできない景色と空間、木々や花が揺れるなかで味わうと殊の外、おいしく感じられ、五感が研ぎ澄まされていきます。

宿泊は1泊朝食付きで提供され、チェックイン時に提供時間を選ぶことができる


『デ サラム ハウス』は、バワが残したホテルのなかでも独特な空間。バワとデ・サラム家の一員となるために、まずはPINKにてご予約ください。

撮影・文:泉美 咲月(Satsuki Izumi)

参考文献:「ジェフリー・バワの全仕事」(著者 ディヴィッド・ロブソン/日本語翻訳高橋正明/グラフィック社刊)、「IN SEARCH OF BAWA Master Architect ofSri Lanka」(著者ディヴィッド・ロブソン/TALISMAN 刊)、および現地取材により執筆


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デサラムハウスに宿泊するツアーコース
スリランカにある唯一無二のホテル達を巡る~バワの面影を探す旅8日間①/カンダラマ+デ・サラムハウス+ルヌガンガ各2泊
スリランカにある唯一無二のホテル達を巡る~バワの面影を探す旅7日間②/カンダラマ2泊+デサラムハウス1泊+ライトハウス2泊ふたり旅
スリランカにある唯一無二のホテル達を巡る~バワの面影を探す旅7日間③/カンダラマ2泊+デサラムハウス1泊+ライトハウス2泊ひとり旅


デ サラム ハウス<De Saram House>

住所:61/6 Ward Pl, Colombo 07,Sri Lanka
問い合わせ先:03-6264-0740


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