おそらく20年振り位で鎌倉に行った。
実は鎌倉には、若い頃お世話になった90歳のおばあちゃまがいらっしゃり、気になっていたのだが、近そうで遠く、しかも週末激安混むのでつい足が遠のいていた。
中々顔を見せない私達に、それなら、とホテルの宿泊券をプレゼントして下さったのだ。行かないわけにはいくまい。
久しぶりの鎌倉。
先日の河口湖同様、鎌倉駅の周りは外国人で溢れていた。それでも河口湖より日本人学生達がたくさんいたと思う。
友人と待ち合わせて、昔何度か来た名物の怖~いお母さんのいる長谷駅のドイツ料理店へ。
混み合うランチ時と思い、予め予約をした。どこも満席で溢れかえるレストランを横目に遅刻は許されないから、少し小走りになる。
海が目の前の綺麗なマンションの間に、20年前と変わらない佇まいの緑の屋根を見つけた。入るとすぐに「開店59周年」のお花が目に入る。
予想に反して店内に入るお客様はカップル一組だけだった。壁に飾られた雑誌の切り抜きやドイツの写真など、全く昔のままで、そのまま全てが色褪せていて、天井の万国旗がさらに物悲しくさせる。
おばさんは、おばあちゃんになっていたけれど、ご健在でまず一安心。
おばさんが最初に「ご予約ありがとうございます」と言ってくれたので、予約して来て良かったと思った。
ドイツの家庭料理のコース料理で2500円程度。スープ、サラダ、ソーダブレッド、メインとコーヒー。
スープの後、おばさんがサラダを持ってきた時、話が尽きずまだ皆スープを飲みきれていなかったら「まだ飲んでないの?お喋りは食べてから!」と言われ、スープ皿をさげにきた時「さじも頂戴」と言われたのに、一瞬「匙」がピンとこなかった友人には「日本語がわからないのね」と一言。
カーラおばさん節は健在だった。昔と全然変わってない。
とにかくコーヒーのソーサーの上のスプーンの置き方などまでことごとく注意される始末。
低い声で、ドイツ人ぽいパシッとした物言い。
けれど会計の時、
「若い頃来ていて、どうしても来たくて、久しぶりに来ました。いつまでもお元気で。」と私が言うと、
「車の運転もできないくらいにあなたは歳をとったの?」と言った後、
最後の最後に「また来てください」と微笑んでくださった。
ツンデレとは違う、まるで子供の頃に母親に怒られた後、泣いて、抱っこされた時の気持ちに近いものの様なお母さんの温かさ的な・・・
とたんに嬉しくて、そして切なくなる様な気持ちで店を後にした。
こういう店はきっと今確実に減っているに違いない。若い人ならドMで無い限り二度と行くまいと思うだろう。けれどおばさんはいつでもレディファーストやテーブルマナーを実はきちんと教えてくれるのだ。
それが、我々にとっては、愛情一杯の食べ物屋さん。
味以上に凄いものをいただける、と思えてしまう。
これって歳のせい?
新旧が混在する鎌倉での出来事だった。
鎌倉 SEA CASTLE